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山口 正剛; 志賀 基之; 蕪木 英雄
Journal of the Physical Society of Japan, 73(2), p.441 - 449, 2004/02
被引用回数:23 パーセンタイル:71.32(Physics, Multidisciplinary)水素を含むニッケル5(012)傾角粒界と(012)表面の電子構造を、フルポテンシャル補強平面波法を用いて計算した。そして、水素が粒界/表面にあるとき、固体内部にあるときの結合エネルギーを計算した。Ni(111)表面に水素があるときの結合エネルギーも計算し、実験と比較したところよく一致した。水素が5(012)粒界/表面にあるときと、固体内部にあるときのエネルギー差を計算してそれを粒界/表面偏析エネルギーとし、2つの偏析エネルギーの差を脆化能(embrittling potency)として計算した。水素の偏析するサイトは全エネルギーの最小化から求めた。結果として、水素原子はバルク内部よりも5粒界にいる方が約0.3eV/H安定であり、5粒界よりもその破面である(012)表面にいる方が、さらに約0.3-0.4eV/H安定であることがわかった。粒界空孔が余分なNi原子で占有された場合、粒界エネルギーが約10%増加するが、その場合も計算を行った。この場合、粒界偏析エネルギーは減少して偏析が起こりにくくなることがわかった。加えて、水素原子が粒界,表面,バルク中にあるときのゼロ点振動エネルギーの計算も行ったが、結果はすべて0.12-0.16eV/Hの範囲に収まった。そのため、粒界/表面偏析エネルギーや脆化能に対するゼロ点振動エネルギーの影響は小さいと考えられる。